GP JOURNAL

フォトグラファー 鶴田貴洋「考えて考えて考えて、撮る」

ChatGPTで要約する

“GP TECH” generating now…

こちらの要約文はAIによって生成されたものであり、情報の正確性を保証するものではありません。

ひょんなことから写真の世界へ

三戸:
この道を志ざされたきっかけを教えていただけますか?

鶴田:
もともとは父がカメラマンだったんですよ。
ただ、父と仕事を一緒にしたということはないし、
どんな仕事をしていたのかも実はよく知らないんですけど。
高校を卒業するタイミングで、父の跡を継ぐという選択肢もあったんですけど、
結局普通に大学行って、普通に新卒で普通の企業に入って。

三戸:
ちなみに・・・

鶴田:
サミーというパチンコとかスロットの会社です。
入社3年目の時にセガを買収して、セガサミーホールディングスになって。
自分はサミーの中でもアミューズメント担当だったんですけど、セガに強制的に転籍になって、
もうサミーに戻ってくることはないですと言われたときに退職願を出しました。

三戸:
それは、サミー愛?

鶴田:
いや、セガでの自分の未来を感じられなかった。
そこで退職希望を出したんですね。
ちょうどそのころ、父が結婚式のスナップをすごく頼まれるようになってきて、
でもうちの父は広告カメラマンだからやるつもりはこれっぽっちもない、と。
こう言っちゃあなんですけど、ギャラも全然違う(笑)、
お前がやるつもりがあるんなら新しい会社でも立ち上げてやればいいんじゃないと言われて、
結局立ち上げはしなかったんですが、
同じ会社のブライダル営業部みたいな感じで始めることになったんです。

三戸:
その時点で、お父さまに写真技術の手ほどきを受けていたんですか?

鶴田:
いや、まったくないですね。でも憧れはありましたね。
カメラマンって、端から見るとかっこよく見えるじゃないですか。
実際中に入ると違うんですけど。

三戸:
分かります。かっこいい感じしますよね。

鶴田:
そんなわけで、いきなりカメラを渡されて。
これで撮ってこいぐらいの勢いで。
でももちろん撮れないから本当に勉強しましたね。
平日は、レタッチをやっている会社でアルバイトとして勉強させてもらいながら、土日は毎週撮影してって感じで。

※カメラマンだったお父様。巨匠の雰囲気が漂います。

未熟なカメラマンが多い

三戸:
ちょっと変わっているキャリアスタートですね。

鶴田:
そうですね。やっぱり、アシスタント4~5年やってからカメラマンの見習いになってみたいなのが一般的ですね。
ただやっぱりスナップは緩いんですよ。プロカメラマンになるための資格はないので、実力に関係なく自らプロと名乗ったらプロと認知されてしまう。
なのでプロと名乗っていても未熟だと感じるカメラマンは結構多いです。
実際に一緒に仕事する機会がまったくないとしても、結果を見なくても分かるような場合すらある。

三戸:
結果を見なくても分かるんですか?

鶴田:
まず、第一にカメラを1個しか持ってきてないっていうカメラマンは完全に自分の中ではアウトなんです。
それ壊れたらどうするんですかっていうことなんです。
そこの時点で、プロじゃない。

三戸:
確かに。ちなみに、うまい写真ってどういう写真なんでしょうか。

鶴田:
その写真を、考えて撮ってるか撮ってないかが重要ですね。
写真って、算数みたいに正解があるとは言い難いじゃないですか。
99人がこれは駄目だと言っても、一人がいいと思っている人がいるのであれば、それはそれで成立する。
自分はそれを全否定することはできないなというのを根底に持ちながらやってます。でも、その写真を撮った理由を聞いたときに、こういうふうに撮りたかったからです、ここにあるこれを入れたかったんです、こういう雰囲気にしたかったんです、というのが言えなければダメだと思ってます。そこに自分なりの考えがあることが重要。

三戸:
うちの代表も、しょっちゅう、何となくで仕事をするな、すべてにちゃんと自分なりの理由とか、説明できる何かを持てと言いますね。

鶴田:
本当にそういうことですね。
考えもなしに撮ってきた写真というのはやっぱり分かるので。

三戸:
うまい写真を、つまり考えのある写真を撮れる人と、そうでない人って、人間的に違いとかってあるんですか?

鶴田:
やっぱり写真が好きかどうかというのが一番。
そういう人はどんどんうまくなっていきます。
あんまり好きじゃないのかなという人は、言っても伝わらないか、もしくは、言って次よくなっても、その次にまた戻ってしまう。
あとは面倒くさがらない人。あと少し身をかがめれば、少し移動すれば劇的に良くなるのに面倒くさがってそのまま撮り続ける、引きも寄りも欲しいなと思いながら時間の余裕があってもどちらかだけを選択してしまう。
こういう人は考えいてるにも関わらずその結果を放棄してしまっているので、
考えてないことと一緒になってしまいます。 

三戸:
ああ、なるほど。

鶴田:
センスがある人なんていないんじゃないかなと思ってるんです。
本当に天才はいるのかもしれないですけど、やっぱりいろんなものを見て、模倣から始めて、この写真を再現したいと思って、いかにそこに近づける努力ができるかが大切なことですね。

三戸:
鶴田さんは優しいんですか、若い人に。

鶴田:
うーん。優しいのがいいこととは思わないんですけど、さっきも言ったとおり、その写真が考えて撮られたのであればオッケーって言いますね。
それから、自分は若い人に教えるときに、絶対に「だから」という言葉を使わないように心掛けてるんですよ。

三戸:
ふうん。

鶴田:
「だから」っていうのは、「もう、前にも言ったでしょう」っていうニュアンスがあって、それを言っちゃうと、若い人ってもう質問しづらくなっちゃうと思うんですよ。
確認されずに勝手に突っ走られて、失敗されるのがとにかく一番怖いことですから。

華やかな世界?

三戸:
写真っていろんなブームを経て、いまやすっかり定着した分野ですよね。
そういう中で、写真が趣味だから仕事にしたいっていう若い人はたくさんいらっしゃると思うんですけど、好きなことを仕事にすると決めた時に決定的な必要なことって何なんでしょうかね。

鶴田:
うーん…。現場に行くまで、カメラマンがキツい肉体作業だということを知らない人は結構いるんですよ。
あとは、やっぱりスナップカメラマンはかなり下に見られるんで、扱いは割とひどいんですよ。
そういう理不尽さというのはもちろんどこの世界にもあると思うんですけども、
華やかな業界だと思って飛び込んだら、実際違うんですねっていって辞めていく人はたくさんいますね。
時間に制限があって、自分たちの立ち位置も限られていて、人には気を遣ってっていう中で、「考えて写真を撮りなさい」って言われて、テンパって疲れて嫌になって。

三戸:
ある種泥臭く、地道な肉体労働だという側面を理解できないと難しいっていうことですよね。

鶴田:
だから、やっぱり一度は社会に出たことがある人の方がいいかもしれない。

ウェディングスナップは一日のストーリー

鶴田:
実はウエディングスナップの仕事って数枚で構成されるアルバムさえどうにかなれば何とかなる世界だったりするんです。
補正の力を駆使すれば、そこそこにはなる。
ただ、最近は500とか600の枚数のデータを渡すプランも増えてきていて、でも実はそのデータ部分を、きちんと売り物として撮ることこそが難しいんです。
だからアルバムより価格が安いデータ商品にこそ、一番いいカメラマンを付けざるを得ないというケースもあるんですよね。

三戸:
なるほど。すべて見られちゃうわけですもんね。

鶴田:
時々、採用希望者の人が、結婚式で撮った素敵な写真を持ってくることがあるんですけど、見たいのは一枚の素晴らしい写真じゃなくて、流れなんですよね。
たまたま撮れたいい写真持ってこられても困るんですよね。
うちのカメラマンにも、100点満点の何枚か写真があっても意味がない、
ただし、全部確実に撮りなさいということを言うんです。

三戸:
うん。確実に全部70点以上を、ということですね。

鶴田:
そう。そこがプロ。特にスナップのプロだと思う。
キスシーン撮れませんでした、やり直してくださいというのは不可能ですから。
最初のうちは怖いから、70点くらいを基準にして、だんだん慣れてくると、ここまでは行けるだろう。
ここまで行けた。じゃあ、次はここも行けるなというのを何度も続けて、絶対大丈夫、次はここの場面ならこれもトライできるなというのがんどんどん増えていって、
最初70点だったのが、80点になり、90点になってくるんです。
ただある程度をキープするのはプロであれば譲れない。

三戸:
ブライダル写真って、その日一日を静止画で追う素敵なストーリーみたいな感じなんですね。
私、自分の結婚式写真にすごい悔いが残ってるんですよ。
いつか娘が見るかもしれないんですけど、自分で見ることは二度とない。
そんな結婚写真って悲しいですよね。

鶴田:
たまに友人の結婚式のアルバムを見ることがあるのですが、怒りがわいてくるような写真もありますね。

三戸:
あれ、悲しいですよね。
世の中いろんなシャッターシーンがあると思うんですけど、結婚式の写真がいまいちって一番悲しいと思う。運動会とか誕生日と違って、基本的には一度きりだから。
そういう意味では、ブライダルスナップというのはすごくシビアに見られる怖い仕事ですね。

鶴田:
うん。そうですね。私もまだまだ勉強中ですが本当に難しいと思います。

※現場で撮影中の鶴田さん

どれだけ「考えることができるか」が勝負

鶴田:
実は、グローバルプロデュースさんと付き合うようになって、
スナップ写真を撮るスタンスが多少変わってきたんですよ。

三戸:
あら。

鶴田:
というのは、カメラマンって「撮れて当たり前」というところからスタートするんですね。

三戸:
なるほど。

鶴田:
結婚式だとちょっと違うんですけど、企業さんのイベントの記録写真って、やっぱり確実に撮ることが第一で、これまで質を求められてると感じることがあまりなかったんです。
だから、仕事が来てるっていうことは満足してもらえてるのかなぐらいの感じで自分の仕事を評価するしかなくて。
以前は、説明を受けたものをそのまんま撮るみたいな、完全に受動的な感じでした。でも、GPさんはリハーサルにも参加させてくれるし、時には打ち合わせにも参加させてくれる。
撮影中に自分の中で何か選択を迫られたとき、基本的にはクレームにならないであろう堅い選択をする事しかできませんが、予め打ち合わせをしていると質を求めた選択をする事ができる可能性が出てくる。
また現場で明かりについても確認をしてくれる。
自分が撮影環境についてリクエストできるのであれば、このぐらいで妥協しようと思っていたものの質をもっと上げられる可能性が生まれるんです。
それは、これまでのスナップ撮影人生の中では結構センセーショナルな出来事で。

三戸:
うちはみんな仲間!という主義なので…。

鶴田:
だからGPさんの現場はすごくやりがいがあるんですよ。
ただ、もちろん駄目だったときもひどいこと言われるんだろうなと思って。

三戸:
言うでしょうね(笑)

鶴田:
でも、ひどかったらひどかったで、そう言ってもらいたいんで、すごくありがたい。たぶんカメラマンはみんなそう思ってるはずなんですが、記録写真の仕事って、一回失敗したら切られるという覚悟は持っているんです。
でも、その中でも、お互いに協力しあって、ある高みまでもっていこうと思えるのは今のところGPさんだけですね。
結婚式でもそれを目指したいんですけどね。なかなか難しい部分はある。
だから、そういった環境で自分ができる精いっぱいのことって、基本的には一枚たりとも失敗せず、かつ平均点をどこまで高められるかということになるんです。
全部の写真を考えて考えて考えて撮る。意図のある写真。誰が見ても、「あ、これを撮りたかったんだね」「あ、この笑顔が素晴らしいね」って思える写真。
限られた条件の中で、どれだけ「考えることができるか」が勝負なんです。
だから妥協ってネガティブな意味じゃなくて、プロ意識としての妥協なんです。

三戸:
分かります。そうですよね。
何か制限のある中でのモノづくりってそうですよね。趣味じゃないんだから。

鶴田:
周りの目を気にせず、行っちゃいけないところに行ったり、
立てちゃいけないところで三脚立てるようなカメラマンもいるんですけど、それはNG。
そういうことはしない上で一番いい角度ってどこだろう、
一番いい明かりはどこにあるかを瞬時に判断して、当たり前のものを当たり前に撮って。
そこを面倒くさがらずにやるっていうことでしょうね。

三戸:
なんだかハッとするようなことをたくさんお聞きできました。
ありがとうございました。
(終)

INTERVIEWインタビュー

公開日:

2016MAY

20

当社のサービス業務の流れ、実績をお聞きになりたい企業様はこちら
お問い合わせ

《 イベントのトレンドや世界の最新情報をお届け 》