新国立劇場バレエ団『シンデレラ』を観に行きました!
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こんにちは!GP大平です。先日、新国立劇場バレエ団の「シンデレラ」を観に行ってきました。
実はこの作品、私にとってかなり特別な存在なんです。私自身、3歳から10年間クラシックバレエを習っていたのですが、3歳で人生初めての発表会の演目が「シンデレラ」でした。その時は舞踏会に行けず落ち込むシンデレラを励ます「お花」の役(笑)。小さな身体で舞台袖から憧れの眼差しを向けていた、あのキラキラした時間。真ん中で踊るシンデレラ役のお姉さんがとても綺麗で「わたしもいつかこんな風になりたい」と感じたのを今も覚えています。


だからこそ、今回、客席に腰を下ろした瞬間から久しぶりのシンデレラの舞台にワクワクが止まりませんでした。ステージ下にはオーケストラの演者の方々がスタンバイしているのも見え、ワクワクは最高潮。第一幕の音楽が始まると、一気に幼い頃の記憶が蘇ります。シンデレラの音楽は華々しいストーリーに反して、冒頭はどこか不穏で謎めいた雰囲気で始まるんです。その独特な始まりが観客の心を静かに作品の世界へと引き込んでいきます。


多くのバレエ作品では、幕が上がる前に少し長めの序奏が流れますが、私はこの「待つ時間」がたまらなく好きです。まるで、美味しそうな料理の香りを先に感じて、これから味わう瞬間をさらに楽しみにさせてくれるような感覚。バレエの幕前の音楽もそれと似ていて、心を少しずつ作品の温度に馴染ませ、これから始まる夢のような物語への期待を高めてくれます。
今回の「シンデレラ」は、物語の大枠こそ誰もが知るものですが、細部に現代的な解釈が施されていました。例えばシンデレラの傍には優しい父親のような存在がいたり、お姫様候補が意地悪な姉たち以外には登場しなかったりと、シンデレラの心情に自然に寄り添える構成になっています。
演出面で特に心を掴まれたのは「時計の精」のシーンでした。反復される動きが少しずつズレていくような振り付けが、まさに時計のようでした。また、今回の舞台は「幕」の使い方も印象的。背景となる幕が実は何層にも仕込まれており、妖精が登場するたびにその幕がひとつずつ上がりることで舞台の奥行きがどんどん広がっていくのです。視覚的にスケールが増していく演出が面白いなと感じました。また、「紗幕(しゃまく)」の活用も効果的でした。紗幕とは、光の当たり方によって内側が透けたり隠れたりする、薄手で目の粗い幕のことです。大きな時計の針を映し出し、12時に迫られる焦りをダイレクトに見せたり、場面転換を一瞬で行ったりと、その特性が最大限に活かされていました。
そして、圧巻だったのが第2幕のラストです。魔法が溶けるまでのタイムリミットが迫るなかで、シンデレラは人だかりから逃げようともがくのですが、人に埋もれて一瞬姿が見えなくなったと思うと、12時の鐘が鳴ってしまい、美しいドレスに身を包んでいたシンデレラが一瞬でボロボロの姿に変わったのです。あまりに鮮やかで、観客全員が「えっ!?」とどよめきが起きていました。ミュージカルや舞台ではこうしたどよめきをよく聞くのですが、バレエの舞台ではあまり起きることが無いので新鮮でしたし、衣裳、照明、動き、その全てが奇跡的なタイミングで成立する演出に、ただただ感激しました。


バレエは物語を追うだけではもったいない芸術です。舞台美術も照明も、音楽もダンサーも、全てが一つの感情を共有しながら世界をつくり上げています。「シンデレラ」という誰もが知る物語を、こんなにも新鮮に、ドキドキする体験に変えてしまうバレエ。初心者の方でも、きっと魔法を感じていただけるのではないでしょうか。


