良いデザインは、どう見抜く?イベントプロデューサーが磨く“判断軸”の話
「なんとなく、これがいい」
イベントプロデューサーとして仕事をしていると、そんな感覚でデザインを選びたくなる瞬間があります。でも、その「なんとなく」だけではクライアントを納得させることはできません。
今年度から川本チームで始めた「審美眼ディスカッション」は、その“なんとなく”を言葉にするための取り組みです。

やり方はとてもシンプル。デザイン雑誌をチーム内で回し読みし、直感的に「いいな」と思ったデザインに付箋を貼る。そして、一人ずつ「なぜ良いと思ったのか」を共有していきます。
目的は、イベントプロデューサーとしての“審美眼”を磨くこと。
イベント制作では、進行スライドやイベントロゴ、フォトスポット、ノベルティなど、数え切れないほどのデザイン制作に携わります。私たちの役割は、デザイナーが制作したものをそのままクライアントへ届けることではありません。
「このデザインはイベントの世界観と相性が良いですね」
「写真映えはしますが、情報量が多く少し見づらい印象です」
「この色使いは高級感がありますが、ターゲットには少し硬く映るかもしれません」
そんなふうに、それぞれのデザインの魅力や特徴、メリット・デメリットを整理し、クライアントが納得して選べる状態をつくることも、イベントプロデューサーの大切な仕事です。
だからこそ、自分の中に「良いデザインとは何か」という判断軸を持っておく必要があります。
SNSを開けば、毎日のように洗練されたデザインが流れてくる時代。魅力的なデザインに触れる機会は増えましたが、「なぜ魅力的なのか」を自分の言葉で説明できる人は、意外と多くありません。
このディスカッションを始めて最も難しいと感じたのは、直感を言語化することでした。
「色の組み合わせが好き」
「レイアウトが見やすい」
「余白の使い方が心地いい」
そう思っていても、一歩踏み込んで理由を説明しようとすると、意外と言葉が出てきません。惹かれたのは色なのか、文字組なのか、写真のトーンなのか。それとも全体の空気感なのか。
「良い」と感じた理由を分解していく作業は、想像以上に難しく、それと同時にとても面白い時間でした。さらに興味深いのは、同じデザインに付箋が集まっていても、「良い」と思った理由は人によってまったく違うことです。
ある人は配色に惹かれ、ある人はタイポグラフィを評価し、また別の人は余白の美しさに魅力を感じる。同じデザインを見ていても、人それぞれ見ているポイントは違う。その違いを知るたびに、自分にはなかった視点が増え、「デザインを見る解像度」が少しずつ上がっていく感覚がありました。


何度か続けていると、自分自身の「好き」の傾向も見えてきます。シンプルなデザインに惹かれるのか。大胆な配色が好きなのか。余白の美しさなのか、情報量の多さなのか。
この時間を通して改めて感じたのは、イベントプロデューサーに必要なのは、「流行っているから」「有名なデザイナーだから」という他人の評価ではなく、自分自身の判断軸だということです。
入社したばかりの研修で、代表の光畑からこんな話を聞きました。ブランドのバッグや時計を選ぶとき、「有名だから」「高級だから」という理由だけで身につけていないか。
「素材へのこだわりが好き」
「ブランドの哲学に共感している」
「長く使えるデザインに価値を感じる」
そんなふうに、自分なりの理由を持って選ぶことが大切だと教わりました。
デザインも同じです。「なんとなく好き」で終わるのではなく、「なぜ好きなのか」を説明できるようになると、自分の美意識に少しずつ輪郭が生まれてきます。他人の評価に流されるのではなく、自分の基準で良し悪しを判断できるようになる。その積み重ねが、イベントプロデューサーとしての審美眼につながっていくのだと感じます。
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