それ、イベントでも使えそう。街で見つけた「人の気持ちを動かす」小さな演出
この記事のポイント
- 街の「ちょっといい」を、イベントのアイデアに変える記事
こんにちは!GP平賀です。
イベントの仕事をしていると、ちょっと困ったことがあります。
それは……
「街を普通に歩けなくなること」
カフェに入れば、メニューより先に照明を見る。ホテルに泊まれば、部屋より先にロビーの香りが気になる。商業施設に行けば、「このサイン、導線うまいな……」と立ち止まる。駅のポスターを見れば、「これ、イベントの受付でも使えるのでは?」と考える。
もはや職業病です。
でも実は、イベントのアイデアって、必ずしも最新テクノロジーや大掛かりな演出から生まれるわけではありません。街の中には、ほんの数秒で人を立ち止まらせたり、ちょっと嬉しい気持ちにさせたり、思わず誰かに話したくなったりする“小さな仕掛け”がたくさんあります。
今回はそんな、「これ、イベントに持ち帰れそう!」と思う街中の演出を、イベント屋目線で勝手に解剖してみます。
ホテルの「香り」は、記憶を先回りしている

ホテルに入った瞬間、「あ、このホテルっぽい香り」と感じた経験はありませんか?
まだチェックインすらしていない。部屋も見ていない。スタッフともほとんど話していない。なのに、すでにブランドの世界観が始まっている。香りってすごい。
イベントではどうしても、映像!照明!音響!LED!と、目や耳に届く演出を中心に考えがちです。
もちろん、それらも全て大事です。でも、人間には五感があります。視覚、聴覚、味覚、触覚、そして嗅覚。そこで、イベントに“香り”を入れ、嗅覚を刺激するアプローチが考えられます。例えば、新商品の世界観に合わせて会場の香りを設計する。海外をテーマにしたイベントなら、その土地を連想する香りをエントランスに漂わせる。周年イベントなら、毎年同じ香りを使ってブランドの記憶と紐づける。
派手ではありませんし、写真にも写りません。でも、「なんか、この空間好きだな」という感覚をつくれるのが香りの面白いところ。
イベントの演出は、全部SNS映えしなくてもいい。むしろ写真に残らないものほど、記憶に残ることもあります。
ショップの「あと1メートル」が、人を動かしている

ショップのディスプレイを見ていると、「絶妙に全部を見せてくれない」ことがあります。
入口から気になる商品が少し見える。奥に何かありそう……でも全部はわからない。だから、あと3歩、あと5歩……気づけば店内へ。うまい!
これはイベントでいうところの、「期待感のデザイン」です。会場に入った瞬間、全部を見せてしまうのではなく、「この先に何かある」と思わせる。
エントランスではキービジュアルだけ見せる。曲がった先に巨大オブジェが現れる。カーテンを抜けた瞬間、メインステージが広がる。最初からクライマックスを見せない。
参加者の移動そのものを演出にしてしまうわけです。映画でも予告編で全部ネタバレされたら、ちょっと悲しいですよね。イベントも同じ。
「見せるの前に、見たくさせる」
このワンクッションが、体験をぐっとドラマチックにしてくれます。
商業施設のベンチは、「何もしない時間」まで設計している

商業施設にあるベンチ。あれを「休憩用のイス」とだけ考えるのは、ちょっともったいないかもしれません。よく見ると、人が集まりやすい場所に置いてあったり、吹き抜けを眺められる向きになっていたり、ショップの前に少し滞在できるよう配置されていたりします。
つまり、“立ち止まる理由”をつくっている。
イベントでも、コンテンツを詰め込みすぎることがあります。オープニング!セッション!表彰!トーク!映像!懇親会!はい次!はい次!はい次!……参加者、大忙しです。
でも実は、人と人の関係が生まれるのって、プログラムとプログラムの“間”だったりします。さっきのセッションについて話す。久しぶりに会った同僚と近況を話す。展示を眺めながら感想を交換する。そんな余白があることで、イベントは「見たもの」から「体験したもの」へ変わります。
だから、イベント会場にもベンチ的発想を。座れる場所。立ち話できる場所。コーヒーを飲みながら余韻に浸れる場所。何も起きない場所を、あえてつくる。実はこれも立派な演出です。
帰り際に渡す小さなギフトは、余韻を持ち帰る演出かもしれない

ショップやイベントの帰り際に、小さなカードやギフトをもらったことはありませんか?
その場では、ほんの小さなプレゼント。でも、家に帰ってからもう一度手に取ると、その日に見た景色や交わした会話まで、ふと思い出すことがあります。
イベントでも、参加者が最後に持ち帰るものは、単なる記念品ではありません。
たとえば、イベント中に撮影した写真をその場で小さなフォトブックにする。今日伝えたかったメッセージをカードにして渡す。参加者一人ひとりに合わせた言葉や、イベントの思い出が残るアイテムを出口で手渡す。
イベントが終わった瞬間に、その日の体験がすべて過去になるのではなく、持ち帰ったものをきっかけに、もう一度その時間を思い出してもらう。
それは、イベントの余韻を会場の外まで連れていく演出です。
最後に受け取った小さなギフトによって、「楽しかった」で終わるイベントが、「また参加したい」と思える記憶に変わるかもしれません。
イベントは、参加者が会場を出た瞬間に終わる必要はありません。
“思い出を持ち帰ってもらうところまでが、エンディング演出”
帰り道や家に着いたあとまで体験をつなげられたら、そのイベントはきっと強い。余韻も、形にして渡すことができるんです。
イベントのアイデアは、意外と会議室の外にある
こうして街を見てみると、ホテルも、ショップも、商業施設も、実は全部、
「どうすれば人が心地よく動くか」
「どうすれば記憶に残るか」
「どうすればちょっと嬉しくなるか」
を考え抜いてつくられています。それって、イベントづくりとほとんど同じです。イベントのアイデアを考えるとなると、つい「何か新しいことをしなきゃ」と思ってしまいます。でも、新しさは必ずしも“誰も見たことのない演出”だけではありません。いつもの街で感じた小さな「いいな」を、別の文脈に持っていく。大きくしてみる。組み合わせてみる。イベントという場所に翻訳してみる。
そこから、意外と面白い企画が生まれます。だからイベント屋は今日も街を歩きながら、
「あの照明いいな」
「この案内サイン、わかりやすいな」
「この待たせ方、うまいな」
とキョロキョロしています。
決して落ち着きがないわけではありません。たぶん。
街は、巨大なイベント企画書。次にホテルやショップ、商業施設へ行ったときは、ぜひ「これ、イベントにするとしたら?」という目線で眺めてみてください。いつもの景色の中に、次のイベントのヒントが転がっているかもしれません。
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