江戸の「月待ち」を現代へ。高輪を彩った「MoON MONTH」が素敵すぎる

お月見といえば、月を眺めながらお団子を楽しむ。そんなイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
一方、江戸時代の高輪では、月が昇るのを待ちながら、人々が集い、語らい、食や酒を楽しむ「二十六夜待ち」という文化が親しまれていたのだとか。
そんな“月を待つ時間”を、現代のエンターテインメントとしてよみがえらせたのが、「MoON MONTH(ムーン・マンス)― 月を待つ月 ― 」です。
昔ながらの日本文化が、現代のエンタメと出会うとどう変わるのか。今回は、その楽しみ方を覗いてみましょう!
江戸の「二十六夜待ち」を、現代の高輪でもう一度

「MoON MONTH」のテーマとなったのは、江戸時代の高輪で親しまれていた「二十六夜待ち」。
この行事は、その名の通り、旧暦7月26日の夜に月が昇るのを待つ行事のこと。当時、月の名所として知られていた高輪には多くの人々が集まり、月が姿を現すまで語りあい、食や酒を楽しんだと言われています。
つまり、主役は月だけじゃない!月を待っている時間そのものを、みんなで楽しんでいたというわけです。
「MoON MONTH」では、そんな高輪の歴史をそのまま再現するのではなく、アートや食、音楽、体験型プログラムなどを通して現代の楽しみ方へ。
変わらない月を眺めながら、楽しみ方は時代に合わせて変えていく。 江戸の人々が楽しんだ“月待ち”を現代のエンターテインメントへとつなぐ、28日間の「MoON MONTH」が展開されました。
江戸の月夜へタイムスリップ。没入型コンテンツで楽しむ「月待ち」
現代によみがえった“月待ち”には、江戸の夜へ入り込むような体験も。
会場には、江戸の星空を歩くような没入型プラネタリウムや、当時の装いを再現した演出など、江戸の「月待ち」を体感できるコンテンツが登場。
歴史をただ“知る”だけでなく、エンタメとして楽しめるのが面白いところです。
江戸の星空を歩く「月待ちの宵」

没入型プラネタリウム「月待ちの宵」では、江戸時代の星空をなんと床面いっぱいに再現。
映像を見上げる一般的なプラネタリウムとは一味違い、楽しむのは足元に広がる満天の星。星空の中を歩きながら、かつて高輪の人々が眺めていた夜空を体感できる仕掛けです。
プログラム制作を手掛けたのは、プラネタリウムクリエイターの大平貴之氏。ナレーションは津田健次郎氏が担当しました。
さらに夜の部では、ワンドリンクも用意。星空を眺めながら一杯を楽しめば、かつて江戸の人々が親しんだ“月を待つ時間”に、ちょっぴり近づけるかも。
「江戸のひと」が館内に!? 時代そのものを演出

館内には、「二十六夜待ち」をイメージしたフォトスポットも登場。
スペシャルイベントでは、本格的な江戸時代の衣装をまとった役者たちが館内を練り歩き、現代の高輪に江戸の月見客が現れたような景色が!
面白いのは、展示を見るだけで終わらないところ。目の前を歩く人や空間そのものまで世界観の一部にすることで、歴史の中に自分まで紛れ込んだような感覚に。
昔の文化を“昔の話”として眺めるのではなく、今いる場所で体験してみる。江戸の「月待ち」を現代へつなぐ、イベントならではの演出です。
浮世絵から広がる、江戸の“お月見エンタメ”

「MoON MONTH」では、美術作品から当時の月見文化をたどる展示も展開されました。
題材となったのは、江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿の代表作『品川の月』。最先端の撮影・画像処理技術によって超高精細にデジタル化された作品を、巨大スクリーンで楽しめるイマーシブ展示です。
しかも、その舞台は約100畳もの畳の上! 畳に身を置きながら、作品に描かれた20人の人物とともに、江戸の一夜の物語をたどっていきます。
そこで見えてくるのが、当時の意外なお月見事情。月を静かに眺めていたのかと思いきや、海岸には屋台が並び、海には遊覧船が行き交い、人々が集まって大賑わい。江戸のお月見、実はかなりの“イベント”だったようです。
浮世絵をただ鑑賞するだけではなく、巨大な映像と空間演出を通して、その絵に描かれた時代の楽しみ方まで体感してみる。
「昔の人も、こうやって月夜を楽しんでいたんだ!」と分かると、江戸のお月見がなんだか一気に身近に感じられますよね。
餅つき、どぶろく、宇宙兄弟まで!「月」を入口に広がるコンテンツ
そして「MoON MONTH」の面白さは、“月”というひとつのテーマから、驚くほど幅広いコンテンツへ展開していること。餅つきにどぶろく、ものづくり、音楽、漫画、さらには宇宙まで!
歴史好きはもちろん、それぞれの「好き」からイベントを楽しめるプログラムがそろいました。
ついて、食べて楽しむ「月待ち餅つき」

「江戸高輪・月待ち餅つき」では、本格的な木臼と杵を使った餅つきに挑戦。昔ながらの餅つきを眺めるだけではなく、自分でついて、最後は出来たてをいただきます。見て、ついて、食べて楽しむ。なんともおいしい文化体験です。

さらに食のお楽しみはもうひとつ。東京の水と米、麹を使った純米の「高輪どぶろく」の振る舞い酒も登場。月を待ちながら、みんなで食や酒を楽しむ。江戸の「二十六夜待ち」の過ごし方を、現代でも味わえるのは魅力的。
植物インクで“月”を描くワークショップ

植物から手作りしたインクを使って、思い思いの月を描く「Moon Palette」も開催。「二十六夜待ち」の歴史を知るだけではなく、今度は自分の手を動かして“月”を楽しんでみる。完成する月が人によって違うのも、ワークショップならでは。
漫画、音楽、天文学からも“月”を楽しむ


さらに漫画『宇宙兄弟』の作者・小山宙哉氏らによるトークライブや、J-WAVEの公開収録、天体望遠鏡を使った観測プログラムまで登場。
江戸の月待ちから始まったと思ったら、気づけば『宇宙兄弟』に天文学まで!一見まったく違うジャンルでも、“月”を入口にすればひとつのイベントの中でつながっていく。この振り幅こそ、「MoON MONTH」の面白いところです。
そして、これだけ楽しみ方があれば、入り口も人それぞれ。食やものづくり、音楽、宇宙など、自分の「好き」から“月待ち”に出会えるのも、このイベントならでは。
味わう“月待ち”。限定メニューまで世界観の一部に

Photo:一般財団法人JR東日本文化創造財団(PR TIMES)より引用
「月待ち」の楽しみは、展示や体験プログラムだけではありません。館内のカフェやレストランでは、「月待ちみたらしスムージー」や「Harvest Moon」「Pear Moon」など、“月”をテーマにした限定メニューも登場しました。

Photo:一般財団法人JR東日本文化創造財団(PR TIMES)より引用

Photo:一般財団法人JR東日本文化創造財団(PR TIMES)より引用
イベントの合間にちょっとひと休み。そんな時間に楽しむ一杯まで“月”につながっていれば、休憩時間も体験の続きに。
そもそも「月待ち」は、人々が集まり、月を待ちながら食や酒を楽しんでいた文化。そう考えると、イベントの中で“食べる・飲む”ことまで楽しみにしてしまうのも、なんだか江戸の人々と同じなのかもしれません。
伝統文化を、“今楽しめる体験”へ
江戸時代の高輪で親しまれていた「二十六夜待ち」。
「MoON MONTH」では、星空の中を歩き、浮世絵の世界へ入り、餅をつき、酒を味わい、月を描き、宇宙について語り合う。ひとつの伝統文化が、現代の人たちがそれぞれの「好き」から楽しめる体験へと広がっていました。
面白いのは、昔の文化をそのまま再現するのではなく、“月を待つ時間をみんなで楽しむ”という本質を残しながら、今のエンターテインメントへとつないでいること。
江戸では、月が昇るまで語らい、食や酒を楽しんだ時間が、現代ではアートや音楽、ワークショップ、さらには宇宙へ。
変わらない月を眺めながら、楽しみ方は時代に合わせて変えていく。
昔から続く文化も、見せ方や体験のつくり方次第で、まだまだ新しい楽しみ方が生まれそうです。次はどんな伝統文化が、どんなエンターテインメントに姿を変えるのか。イベントをつくる側としても、想像が膨らみますね。
それではまた!
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